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江川紹子の「事件ウオッチ」第103回

【柳瀬氏参考人招致】地に堕ちた公務員倫理――それでも支持率が下がらないのはなぜなのか

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 都合の悪いことは伏せ、動かぬ証拠を突きつけられても、あれこれと詭弁を弄して切り抜けようとする態度も、柳瀬氏個人の資質の問題というより、安倍政権そのものの負の側面を象徴しているように思える。

 これまで安倍首相に対しては、好意的なコメントが目立っていた橋本五郎・読売新聞特別編集委員ですら、安倍政権が国民の不信を呼んでいる理由について、こう書いている。

「まず指摘できるのは、『えこひいき』があったのではないかと思われていることである」

「第二は、『嘘をついているのではないか』と思われていることである。さまざまな記録が残っているにもかかわらず会った記憶はないという。文書は廃棄したといいながら、見つかるとつじつまあわせの答弁をする。親友の悲願であるのに一度も獣医学部の話はしなかったという。(中略)もっとも問われているのは『正直さ』なのではないだろうか」(5月12日付読売新聞)

 加計問題だけではない。森友学園をめぐる問題では、文書が隠され、官僚が虚偽の答弁を行い、そのうえ安倍首相や理財局長らの答弁に合わせるようなかたちで文書の改ざんまで行われていた。そのために、失われた命もあった。

 ほかにも、防衛省の日報隠し、厚労省のデータ隠しなど、どれをとっても、政権が吹っ飛んでもおかしくないような問題が次々に起きている。そこに通底するのは、都合の悪いことは国民から隠しておくという、不正直で不誠実な態度だ。そのうえ、前財務次官のセクハラ問題での麻生財務相の不適切な言動もある。

 ここまで不正直で不誠実な対応を続ける政権が、かつてあっただろうか。

本当に「ほかに適当な人がいない」のか

 それでも、内閣支持率は底堅い。従来の政権であれば、吹っ飛んでおかしくないような問題がいくつも起き、支持率が急落したとはいえ、各社の世論調査では3割前後の支持は揺るがない。最新の共同通信の世論調査では、柳瀬氏の答弁に「納得できない」が77.5%に達したが、それでも内閣支持率は38.8%で、前回よりむしろ微増している。支持の理由は「ほかに適当な人がいない」42.0%が、「経済政策に期待できる」16.5%、「外交に期待できる」16.1%を大きく上回る。そうした理由から、政府の不正直、不誠実に、日本の3分の1以上の国民が、寛容な態度を示していることになる。

 しかし、国民に対して不正直ということは、本来、民主政治にとって致命的な欠陥のはずである。

 第37代アメリカ大統領のリチャード・ニクソン氏といえば、ウォーターゲート事件が思い浮かぶが、この疑惑が持ち上がるまでの彼は、泥沼状態のベトナム戦争から米軍の撤退を実現させて和平調停に調印し、ソ連とのデタント(緊張緩和)を進め、中華人民共和国を訪問して国交樹立の道筋をつけるなど、外交で赫々たる成果をいくつも上げた。支持率も高かった。

 その彼が辞任に追い込まれたのは、民主党本部に侵入して盗聴器を仕掛けたウォーターゲート事件本体への関与が明らかにされたからではない。事件をもみ消す工作に関与したことについて、虚偽を述べ続け、資料を隠し、提出した資料にも改ざんを加えるなど、真相解明を妨害する不誠実な態度を重ねたことが、国民の強い反発を招き、彼自身を追い詰めたのだ。

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