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江川紹子の「事件ウオッチ」第103回

【柳瀬氏参考人招致】地に堕ちた公務員倫理――それでも支持率が下がらないのはなぜなのか

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 実際には、侵入事件でニクソン大統領再選委員会の関係者が逮捕されて6日後には、大統領はもみ消し工作を承認していた。しかし、ホワイトハウスはそれを隠し、「一切関わっていない」と虚偽を述べ続けた。特別検察官と上院特別特別委員会が、大統領執務室内の会話が録音されているテープの提出を求めたが、大統領は拒否し、特別検察官を解任。それに対する国民の反発が強まって、何もしないわけにはいかなくなり、一部のテープ起こしを提出したが、そこには多くの削除がなされていた。

 世論の批判の高まりに抗しきれず、テープを何本か提出したが、一部は消去するなど、やはり改ざんの痕跡があった。それについてホワイトハウスは、大統領の秘書が誤って消去したなどと苦しい弁明をしたが、批判はさらに高まった。最終的には最高裁の判断で裁判所が求めるテープすべてを引き渡すことになり、それが命取りとなった。

 疑惑が報じられた初期の段階で、ニクソン大統領自身がもみ消し工作への関与を率直に認め、国民に謝罪していれば、それまでの功績を評価する者たちから擁護の声が上がっただろうし、辞任にまで追い込まれなかったかもしれない。

 クリントン大統領が弾劾裁判にかけられ、批判を受けたのも、研修生との「不適切な関係」について、裁判で虚偽の証言をし、国民に対しても嘘をついたからだった。結局彼は事実を認め、テレビ演説で国民に謝罪している。

 ただ、アメリカでも、トランプ大統領になってから、状況はずいぶんと変わったようである。トランプ大統領とロシアとの関係をめぐる疑惑でも、大統領の側近らが、連邦捜査局(FBI)に偽証したことが明らかになったが、トランプ大統領自身はむしろFBIを攻撃。コミー長官は、ロシア疑惑の捜査途中で解任された。司法妨害ではないかとの批判は、大統領支持者には響かないようだ。

 コミー氏は、出演したテレビ番組のロングインタビューに応じ、トランプ大統領について、こう語った。

「大統領は、この国の根幹にある価値観に忠実でなければならない。最も重要な価値は真実だ。この大統領にはそれができない。道徳的に、大統領として不適格だと思う」

 トランプ大統領は、指摘された問題点に答えるのではなく、ツイッターで「歴史上で最低最悪のFBI長官」などとコミー氏を罵倒。同氏の回想録は、発売から1週間で60万部が売れるベストセラーとなっているが、トランプ大統領は再びツイッターで「無力で不正直な、嫌なやつ」と非難し、反撃している。

 トランプ大統領の嘘をメディアがいくら報じても、大統領は国民に対して誠実に説明しようとせず、メディアの側を「フェイクニュース」と言い放って終わりにしてしまう。

 そんなトランプ氏の支持率は、高くはないが底堅く、北朝鮮の金正恩労働党委員長との会談への期待もあって、じわじわと上がっている。

 ほかに適当な人がいないといった消去法や、この人なら自分の生活がよくなるかもしれない、とか外交で成果を上げそうだなどの期待から、真実への謙虚さや国民に対する誠実さが置き去りにされても大目に見るという風潮は、国や社会をどのように変えていくのだろうか。アメリカも、そして日本も--。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『』『』『』ほか。『』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル 、:amneris84、Facebook:shokoeg

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