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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

日本の不動産を買い漁った外国勢が、一斉に日本人に売り浴びせて逃げ始める兆候


 彼らはあくまでも自分たちの儲け=数字でのみ投資判断を行う。日本人のような面倒くさい「想い」のような邪念は一切入らない。決断すれば一気に売ってくるのも彼らの習性だ。自分たちの物件を高値で売り抜けるために「ニッポンいいね」くらいのフェイク情報を市場にまき散らしかねないのだ。五輪は「ニッポンいいね」の最大のスタンプともいえよう。

 遅れて市場に登場した日本をよく知らない馬鹿な外国人や、特別な「想い」で動く情緒的な日本人投資家を相手に売り浴びせて逃げる、これが彼らの生態だ。

 こうしたインバウンドマネーは、何も日本だけでなく全世界を股にかけて飛び回っている。いわば、イナゴの群れのような存在とでもいおうか。イナゴの大群は地上から美味しい穀物が生い茂る畑を見つけると一斉に降下して、穀物を食べつくす。ぺんぺん草ひとつ生えない荒れ地になると、群れはまた新しいフィールドに向けて飛び立っていく。

 そういった意味では、イナゴは美味しい穀物が生い茂る畑を上空から常に俯瞰し、次なるターゲットに照準を合わせているのである。日本という畑はイナゴにとってもう十分満腹した可能性もあるのだ。

夕焼け小焼けで日が暮れて


 モルガン・スタンレー証券には有名な投資クロックという考え方がある。世界の都市を時計の時刻で表し、その投資の可能性を表しているものだ。投資先としてこれから大いに可能性がある地域は「朝」。今が旬でどんどん稼いでいくべき地域を「昼」。美味しい想いもたくさんしたが、そろそろ手じまいが必要な地域は「夕」、まったく投資に値しない地域を「夜」という具合に分類して投資のポートフォリオを描いている。

 かつて、ファンドバブルとも称された2006年からリーマンショックの起こる08年までの間、筆者はREITの運用会社の社長としてニューヨークのモルガン・スタンレー本社をよく訪れた。当時、日本では01年にREITが誕生し、不動産と金融が融合。日本の不動産に対する評価と期待は大きく、おそらくモルガン・スタンレーのクロックも日本に「昼」を示していたのではないかと思われる。

 さて、今の日本で、クロックは何時を示しているのだろうか。夕方になると日本では、多くの地域でこんな童謡が流れる。

夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘が鳴る
おてて繋いでみな帰ろ
カラスと一緒に帰りましょ

 ある時、日本でIR(投資家説明)をしていた時、会場となるホテルの部屋の外で午後5時、この童謡が流れた。怪訝な顔をするインド人投資家に私は大きな声でこの童謡を歌ってみせながらこう話したことを覚えている。

「日本人は全員この歌を知っているよ。さて遊びもここまでだ、という歌さ」

 当時はジョークだったつもりが、ほどなくファンドバブルは崩壊した。日本の不動産マーケットもそろそろきれいな夕焼け空になっているのかもしれない。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

●牧野知弘(まきの・ともひろ)
オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。

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