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日本の中小企業は、とっくにデジタル・トランスフォーメーションを実践している


 3つのステップはビジネスのサイクルとして常識的なものだし、5つの指標のうち(1)~(4)は斬新なものではない。ユニークなのは「新しい製品やサービスによる売り上げ」ということになる。

 先日開かれたあるIT企業の決算発表で、「御社は何をもってユーザーにDXを提案するのか」という質問が出た。核心を突くいい質問だったので、記憶に残った。発表者の部門担当役員と質問者の間でやりとりがあって、最終的に落ち着いたのは「ネットにつながることで、製品やサービス、ひいてはビジネスに新しい価値を生む」だった。その程度のことを本気でDXと呼んでいるのなら、IT業界もレベルが落ちたものだ、という感想を持つ人がいるかもしれない。

既存のビジネスモデルを変えてこそDX

 
 DXはビジネスそのものを変える。そしてそれは、必ずしもクラウドやIoT、AI、ビッグデータの採用を意味しない。既存のITを的確に組み合わせれば、ビジネスの変革=DXは十分に可能だし、多額の投資が必要というわけでもない。いくつかの事例を紹介しよう。

【事例1】

 ここにコンクリート製品の専門メーカーがある。つくっているのは側溝のU字ブロックや土留めブロック、壁面を固めるウォール材などだ。土木工事業者に販売するだけでなく、自ら工事を受注することもある。需要先は河川・堤防、道路・鉄道、海洋・港湾、農業・林業と多様で、工事現場ではインターネットが使えないことが少なくない。

 そこでこのメーカーは、携帯電話で撮影した工事現場の風景画像をメールで送信し、工事の進捗状況を把握することにした。受注する前に必要な製品を準備し、いつでも出荷できるようにした。それだけのことだが、年を追って受注が増えた。工事業者にとって、かゆいところに手が届く「在庫センター」のような存在になったためだった。

【事例2】

 愛知県に本社を置くネジのメーカーが、大手製造業から「こういうネジはないか」と相談を受けた。ちょっと特殊なネジで、自社の製品にはない。同業他社に聞いて回ったところ、東大阪市の町工場がつくっていることがわかった。特殊用途のネジの需要は多品種少量なので、顧客は既製品を探すより特注したほうが早いと考える。

 ということは、特注するより安く、確実に特殊ネジが手に入るなら、ビジネスになるかもしれない、と考えた愛知県のメーカーは、自社と同業他社の製品をネット上に掲載し、注文を受けられるようにした。ネジ専門のECサイトをつくったのだ。これが評判となり、現在はネジのメーカーであるとともに、ネジの総合商社という役割を担うようになっている。ネジをつくる技術があればこそ、ビジネスモデルの転換が可能だった。

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