NEW

日本の中小企業は、とっくにデジタル・トランスフォーメーションを実践している


【事例3】

 石川県の自動車解体会社は、まだ十分に使えるエンジンやラジエーターのほか、エアコンやカーオーディオ、カーナビなどを取り出してメンテナンスし、中古の日本車がたくさん走っている中近東や東南アジアの業者に販売(輸出)するビジネスを始めた。最初は自社で取り扱う車両だけだったが、需要が急増したので、他の解体業者、中古車ディーラーから廃車を仕入れるネットワークを構築した。

 一方、輸出先が増えたので、輸出するのに必要な書類をアラビア語やスペイン語で適宜つくらなければならない。人の手で書類をつくったのでは時間もコストもかかるので、この会社は必要な事項を入力するだけで輸出申請書類が自動的に作成できるシステムを開発した。結果として、この会社はITを駆使して「ありがたい」ビジネスを展開することになった。

【事例4】

 福岡市のクリーニング店は、客が洗濯物を持ち込んでくるのを待つのでなく、こちらから取りに行く「出前」サービスを始めた。夜勤明けの人やお年寄りから好評だったので、さらに宅配クリーニングサービスを拡大するため、注文が入ると街を巡回しているデリバリースタッフの携帯電話に業務指示のメールが届くシステムを開発した。ITで無店舗のクリーニングサービスが実現した。

 それだけでなく、この店はシステムをサービス化して、インターネットを通じて全国の脱サラ起業者に提供することにした。現在は地元の福岡市で3カ所、関東、関西で計15カ所、フランチャイズでサービスを展開している。本業はクリーニング業だが、もう一つの顔はネット・サービス業でもある。

ちょっとしたことから始め、KPTで改善する

 
 上記事例が実現した背景には、従来型携帯電話(ガラケー)からスマートフォン(スマホ)やタブレットに移行したこと、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)やASPがクラウドに発展していることがある。各事例で共通しているのは、IoTもAIも使っていないことだ。

 そして重要な点は、いずれも「思いついたのですぐやってみた」ということだ。最初から大きな構想で始めるのでなく、思いついた「ちょっとしたこと」を、身の回りの道具や手段で解決する方法を考える。同じことを繰り返しながら、KPT(「振り返り」によって業務を改善していくフレームワーク)で改善していく。ITの世界で流行り始めた「アジャイル開発」の考え方だ。

 ちょっとしたことにトライするのだから、時間もお金もかからない。うまくいかなくても諦めがつく。ただし手を抜かず、しっかり振り返りをする。

・こうしたらどうだろう(仮説)→すぐやってみる=スモールスタート(小さく産んで大きく育てる)→繰り返し+KPT→改善・改良

というプロセスなしに、いきなりDXに取り組もうとしても失敗するだけだろう。IoTAIもビッグデータもロボットも、しょせんは「道具」にすぎないのだから。
(文=佃均/フリーライター)

日本の中小企業は、とっくにデジタル・トランスフォーメーションを実践しているのページです。ビジネスジャーナルは、IT、IoTデジタル・トランスフォーメーションバズワードの最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!