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成馬零一「ドラマ探訪記」

NHK『透明なゆりかご』は今期No.1ドラマだ…出産と中絶をめぐり逃げ場のない問いを突きつける

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「」より
 金曜22時からNHKで放送されている『透明なゆりかご』には、毎回うならされている。


 まだ第3話が終わった段階だが、先に書いてしまうと、今期のドラマで一番のおもしろさだ。ただ、見終わると、とても打ちのめされる内容なので、覚悟を強いられる作品でもある。

 舞台は1997年の夏。看護師見習いの青田アオイ(清原果耶)が働く由比産婦人科には、さまざまな事情を抱えた妊婦がやってくる。アオイは、院長の由比朋寛(瀬戸康史)から「90年代の最大死亡原因ってなんだと思う?」と尋ねられる。アオイは学校で習ったことを思い出し、「悪性新生物(がん)」だと答える。院長は「教科書だったら正解なんだけどね」と言った後、「本当の1位はね、アウスだよ」と答える。

 アウスとは、人工妊娠中絶のことである。アオイは初日から、この中絶手術の現場に立ち会うことになるが、助手として現場を見つめることしかできない。手術の場面は静かで淡々としているのだが、だからこそ、アオイの戸惑いが伝わってくる。

 手術が終わった後、アオイは院長から渡された「命だったかけら」(胎児の遺体)を集めて瓶に詰める。「人の形じゃないからかな。全然気持ち悪くない」と思った後、もう一体の瓶が入った箱の横に入れて「よかったね。ひとりじゃなくて」と言うアオイ。その後、遺体は「業者のおじさん」に渡される。

 手術が終わってすぐに、アオイは出産に立ち会う。さっきとは真逆の、妊婦が泣き叫ぶ激しい場面となる。

 そこで、「ついさっき中絶手術をした同じ場所で新しい命が生まれるんだ」というアオイのナレーションが入るのだが、出産も中絶も同じ病院の中で行われる日常の風景だということが、本作では最初に描かれた。

“月9”で知られる脚本家の筆が冴え渡る


『透明なゆりかご』が医療ドラマとして特殊に見えるのは、アオイの役割が「見つめる」という立場に特化しているからだろう。

 主演の清原果耶は、連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『あさが来た』(NHK)のふゆ役で女優デビューした16歳の新鋭。おでこを出してオールバックにした髪型と、鋭い眼光が印象に残る。第2話、第3話になると、コミカルな部分も出てくるのだが、何より目の前の現実をしっかりと見つめようとする強い意思が、そのたたずまいに現れている。

 その後、第2話ではひとりで子どもを産んで病院に捨てようとした女子高生の姿が、第3話ではアオイにいらだちをぶつけてくる妊婦との交流が描かれる。一つひとつのエピソードが壮絶で、見ていて圧倒される。その一方で、出産にも中絶にもさまざまな理由があり、何が正しくて何が間違っているのかという判断を、本作はしようとはしない。その意味ですごくフェアな作品なのだが、だからこそ、逆に「あなたはどう思いますか?」と問われているような気持ちになってくる。

 原作は沖田×華の人気漫画『透明なゆりかご~産婦人科医院看護師見習い日記~』(講談社)。漫画版は、西原理恵子やさくらももこの作品のようなデフォルメの効いた絵柄のおかげで、過酷な物語もなんとか読み進めることができる。一方のドラマ版では、生身の俳優が演じるためか、シリアスさは倍増され、見ている側の負荷が強く、逃げ場のない緊張感がより際立っている。そのため、とても息苦しいのだが、静かな劇伴で淡々と描写していく映像はとても美しい。その意味でも、とてもストイックな作品だ。これは、脚本を担当している安達奈緒子の力も大きいだろう。

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