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梅原淳「たかが鉄道、されど鉄道」

羽田空港アクセス新線の全貌…東京駅と直通18分、他主要駅も多数直通でモノレール危機?

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「国際競争力の強化」も主眼


 羽田空港アクセス線の構想はJR東日本が独力で考案したものに感じられるが、実はそうではない。交通政策審議会が2016(平成28)年4月20日に答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」のなかで、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」で整備する意義のある鉄道のひとつとして国土交通大臣に答申したものだ。さらには、交通政策審議会も羽田空港アクセス線を以前の2000(平成12)年の答申から引き継いでおり、東京の都市計画上必要な鉄道として長らく整備を待っていた路線だということとなる。

 JR東日本は羽田空港アクセス線を10年後の2028年ごろには開業させたいという。開業となれば、JR東日本の鉄道網を利用して東京都内はもちろん、首都圏の主要駅から羽田空港への直通列車が走るようになると考えられる。現状では京浜急行電鉄、東京モノレールの列車とも利用者は空港に用のある人だけではなく、沿線の住民の利用も多い。このため、大きな荷物を抱えた状態で朝夕のラッシュに巻き込まれるといった状況も生じていた。羽田空港アクセス線の直通列車は純粋な空港アクセス列車となるので、スピードアップだけでなく車内の快適度も増す。

 難点を言えば、1km当たり200億円以上と見込まれる建設費を償還するために京浜急行電鉄や東京モノレールよりも少々高額な運賃、料金が設定されるかもしれない。それでも、高くてもリムジンバスと同額程度に収まれば、定時性に優れた羽田空港アクセス線の優位は揺るぎないであろう。

 羽田空港アクセス線の総事業費は約3200億円と見込まれる。先に挙げた答申からこの路線は国や東京都にとって必要度の高いものであるため、JR東日本だけではなく、国や東京都が負担する点もほぼ確実だ。その割合は今後決められるとして、同社が支払う額は多くても全体の3分の1程度、殊によると10分の1程度にとどまるかもしれない。

 JR東日本によると、羽田空港アクセス線の開業で鉄道の輸送力は現状の1.8倍となるそうだ。冒頭に挙げた1日平均14万7544人という数値をもとに考えると、26万5000人余りとなり、増加分の約11万7000人をまずは羽田空港アクセス線の1日当たりの利用者数として同社は見込んでいることとなる。

 加えて、京浜急行電鉄や東京モノレールから移る利用者数も考慮に入れれば、羽田空港アクセス線の1日当たりの利用者数はさらに増えて13~15万人となりそうだ。1日当たり15万人の路線というと、現状では埼京線の電車が乗り入れる通勤路線のJR東日本川越線(大宮-高麗川間)が挙げられる(14万8247人:2012年度)。つまり、羽田空港アクセス線を開業させることで同社は川越線クラスの有望な通勤路線をひとつ手に入れることができるのだ。

東京モノレールに損失?


 JR東日本にとっては課題も残る。東京モノレールは、2017年3月31日現在で同社が79パーセントの株式を所有する子会社だ。このため、羽田空港アクセス線の開業で東京モノレールが打撃を受けるような事態が生じれば、JR東日本グループ全体としてはかえって利益を減らしてしまうのではないかという懸念である。

 いうまでもなく、JR東日本が中期経営計画に羽田空港アクセス線の構想の推進を織り込んだということは、この問題について同社グループでは解決したのであろう。具体的には、羽田空港アクセス線によって得られる利益が東京モノレールの損失よりも大きいと見込まれたのだ。

 東京モノレールは2012年度に1日当たり12万3628人の利用者がおり、羽田空港を利用するために乗車している6万5331人を差し引いても5万8297人の利用者が残る。沿線の利用者のための鉄道として注力していくという方策が考えられるであろう。

 補足すると、JR東日本が羽田空港アクセス線の羽田空港新駅と羽田空港国際線ビルとの間を他の区間と同時に建設するかは何ともいえない。建設費は高いうえに、京浜急行電鉄、東京モノレールと並行する区間でもあるからだ。羽田空港アクセス線の開業実績を見て着工という可能性は大いに考えられる。当面の間、この区間は東京モノレールに任せ、羽田空港新駅では互いに乗り換えしやすい構造としつつ東京モノレールも盛り立てるという方策が現実的だ。

 モノレールは一般的な鉄道と比べて敷設しやすいという特徴をもっているので、ルート変更を実施して羽田空港アクセス線ではカバーできないエリアを目指すという構想も立てられるかもしれない。ルート変更先の候補は現在JR東日本が建設中のいわゆる品川新駅だ。東海道線の田町駅と品川駅との間に2020年の開設が決まったこの駅は東京の都心部では例を見ない大規模な再開発が実施され、羽田空港と直結される鉄道の開業は都市の発展をさらに加速させるものとなるであろう。

 羽田空港アクセス線によって東京や首都圏の鉄道の姿は変貌するとともに、人の流れも変わる。そうしたなかで、京浜急行電鉄の対抗策も気になるところだ。両社が切磋琢磨してよりよい羽田空港アクセスの実現を望みたい。
(文=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

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