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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

税務調査に抵抗して高額な追徴課税額アップ!帳簿や領収証の破棄がアダでかえって損!

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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな法人は「有限会社」です。

 税務調査に入っても、納税者が帳簿書類を作成しておらず、本来作成に必要である領収証や請求書といった事業取引の痕跡も処分していることがあります。そのような場合、納税者の所得を把握するのは困難です。ではどうするかというと、「推計」で課税することになります。今回は、いわゆる「推計課税」が行われた事案を紹介します。

 山梨県内のある会社に対し、税務調査が行われました。通常、税務調査が行われる場合は、税理士に連絡があり、日程を調整して時間を決めて調査します。しかし今回は、事前の連絡なく調査に出向くことにしました。事前連絡により、帳簿や証拠書類を破棄・隠匿される恐れがあったためです。このような調査を「無予告調査」といいます。

 調査を行うに当たり突然、納税者Aさんの自宅兼事業所を訪ね、玄関の外に立ち、身分証明書を提示して所属と氏名を述べ、税務調査のために来訪した旨を伝えました。すると、Aさんは電話をかける必要がある旨を申し出て、玄関のドアを開けたまま家の奥に入って行きました。

 調査担当者が玄関の外から呼びかけていたところ、従業員がやってきて「Aさんは体調が悪い。事前通知もなく朝早くから来て非常識だ」と繰り返し発言しました。また、Aさんの配偶者も「本日は都合が悪い。日程を調整してから電話連絡するので今日は帰ってほしい」と言って玄関のドアを閉めてしまいました。こうして、調査担当者は帰らざるを得なくなりました。

 しかし、税務調査が中止になるわけではありません。後日、Aさんと調査担当者で調査日を決め、Aさんの事務所で行うこととなりました。その際に、事業概況に係る質問及び帳簿書類の保存状況について確認したところ「帳簿はそもそもつくっていないし、領収証や請求書はすべて破棄している」と言われました。やはり、そういう人たちだったわけです。それを予見して無予告で調査を行った担当調査官は優秀です。結果的には、帳簿を見せてもらえませんでしたが、そういう納税者だと会う前から見抜いていたわけです。しかし、帳簿がないからといって調査ができないわけではありません。推計で納税額を確定しなければいけません。

書類を保存していないと、かえって税金が高くなる?

 税法では、職員は所得税、消費税に関する調査について必要があるときは、質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、提出を求めることができるとしています。また、実地の調査には、あらかじめ調査を開始する日時、場所、目的、税目、対象となる期間、対象となる帳簿書類などを通知することとなっています。

 そこで、Aさんは調査が終わった後に「今回の調査は違法だ」と申立てを行いました。税務調査の手法についての規制は、かつては緩かったのですが、税法が改正されて無予告での税務調査は原則として行わないこととなったからです。しかし、禁止されているわけではありません。さらに、担当調査官は初めてAさんの事務所を訪れた際、所属と氏名を明らかにしただけで、事務所に入ることもなく、書類を見ることもなく、質問をすることもありませんでした。つまり、なんの調査もしていません。このような場合は、無予告の調査に当たらないと判断されます。

 そして、帳簿書類を破棄していたAさんに対し、実は事前に銀行調査を行っており、確定申告の内容に誤りがあることがわかっていました。その事実を把握してからの調査でしたが、証拠書類は何もありません。そのため推計課税をするわけですが、担当調査官が行った推計の計算に対し、Aさんは「なんの根拠もない、違法なものだ」と主張しました。担当調査官は恣意的に計算したわけではなく、合理的な根拠を示しており、客観的な判断は容易にできる状況をつくっています。

 一方、追徴課税されるAさんからすれば、なんとか推計される金額を下げたいと思うのでしょう。今回は、Aさんの現金や預貯金、所有する自動車、土地建物といった資産から所得を推計され、更正処分となりました。本来払うべき税額より、多い金額だったかもしれません。しかし、それもこれも、調査があることがわかってから帳簿書類を破棄したAさん自身の責任です。税務調査では、浅知恵で抵抗すると、結果的に損してしまうということを認識するべきでしょう。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
 大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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