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江川紹子の「事件ウオッチ」第118回

江川紹子による考察…【日産ゴーン事件】異様だったメディアの保釈報道が意味すること

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日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏
 日産ゴーン事件で逮捕されたグレゴリー・ケリー前代表取締役が保釈された。特捜検察の事件で、否認している被告人が、全事件の捜査が完了しない段階で保釈となるという、極めて異例の展開。長期間の身柄拘束で自白を引き出す「人質司法」など、日本の刑事司法のありようが海外でも問題視されるなか、裁判所がチェック機能を果たした格好だ。

前代未聞の勾留延長却下

 一方で、著名ビジネスパーソンの事件で国際的に注目されたゆえに「特別扱いされたのでは」とみるむきもある。刑事司法の公平性にかかわる、そのような疑念を招かないためにも、全国の裁判所は今後、勾留や保釈の請求に対し、身柄拘束の必要性についての判断を、以前以上に厳正に行う必要が出てきた、と言える。

 ケリー氏がカルロス・ゴーン氏と共に東京地検に逮捕されたのは、先月19日。2010~14年度のゴーン氏の報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかった金融商品取引法違反容疑だった(A事件)。同地検は今月10日、A事件で両氏を起訴。同じ日に、15~17年度分の過少記載(約40億円)で再逮捕した(B事件)。

 捜査段階の勾留は原則として10日以内。「やむをえない事由」があると認められた場合には、10日を限度に延長できる、とされている。法律では、延長はあくまで例外という建て前だが、特捜検察の事件では、原則と例外の逆転が常態化。逮捕されれば20日の勾留は当たり前になっていると言えよう。A事件では、ケリー氏らは20日間めいっぱいの勾留をされた。

 ところが、東京地裁はB事件で10日の勾留は認めたものの、その後の延長請求を却下。検察は準抗告(異議申立)をしたが、認められなかった。

 特捜検察の捜査で裁判所が検察の勾留請求や延長請求を退けるというのは、聞いたことがない。記者会見に臨んだ久木元伸・次席検事も、過去に例があるかを問われ、「つまびらかでない。調べてみないとわからないが、どう調べればいいのかもわからない。あったとしても多くはない」と、困惑の体だった。

 裁判所の対応に、検察側は激怒した。取材の新聞記者らにこんな反応をしている。

<検察からは「ありえない」「特別扱いか」と憤りの声が噴出。……「裁判所は一体何を考えているんだ。ゴーン容疑者は日産にとって今も権力者。外国のトップ経営者だから特別扱いというのか」……ある検察幹部は怒りをあらわにした>(20日付産経新聞電子版)

<ある検察幹部は、東京地検特捜部の勾留延長請求を却下した東京地裁決定に怒りをあらわにした。(中略)別の検察幹部は「勾留延長は当然、認められると思っていたので非常に驚いた。裁判所は海外からの批判に腰が引けているのではないか」と憤った>(21日付読売新聞)

 22日付朝日新聞には、検察幹部の発言を引用した、こんな記事が載った。

<「特別背任は、20日の地裁決定まではやらなくてもいいと思っていた。だが今はやるべきだと思っている」

 ゴーン前会長に会社法違反(特別背任)容疑を適用した21日、検察幹部は言った。翻意の理由は、勾留延長を退けた「裁判所の仕打ち」だと説明した>

 この幹部が言う事実経過が真実かどうかはわからないが、これが事実なら大問題だろう。しかも、裁判所の判断を「仕打ち」と言ってはばからないところに、検察関係者の感覚が見てとれる。

保釈報道を巡る“不自然さ”

 大阪地検特捜部の証拠改ざん事件などを機に検察批判が高まり、特捜検察を廃止すべきという議論まで起きた時には低姿勢だったが、それは一時的なポーズだったのだろう。一連の検察改革の後も、特捜検察の事件は捜査の都合が優先されるべきであり、裁判所は検察の請求を認めるのが当たり前という意識は、あまり変わっていないようだ。

 同地裁は勾留延長を退けた理由を公表。これも異例のことだった。それによると、A事件とB事件は「一連の事案」であることに加え、争点や証拠が重なっていることを指摘。日産の関係者と「司法取引」がなされている本件では、日産側の捜査協力がなされていることも考慮された。

 12月10日の再逮捕は、「一連の事案」を時期によって2つに分けることで、身柄拘束の期間を長期化させるもので、東京地裁が勾留延長の請求を退けた判断も、その理由を公表したことも、私は裁判所がまっとうな役割を果たしたと評価している。

 最近、裁判所が勾留請求を退けるケースは少しずつ増えている。司法統計年報によれば、2017年の全国の裁判所の勾留請求却下率は4.91%。比率としてはわずかのように見えるが、07年の0.99%から年々上昇している。今回の勾留延長請求の却下は、こうした流れの中で出されたものと見ることは可能だ。しかし、異様だったのは、勾留延長却下の直後から、メディアがこぞって「保釈間近」を報じたことだ。

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