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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

米中貿易戦争、米国の真の目的…中国共産党崩壊と「海外技術コピー→締め出し」経済の崩壊

米国のドナルド・トランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席(右)(写真:ロイター/アフロ)

 米国と中国の貿易戦争が再び激化してきた。米中両政府による通商協議は決裂し、米国は2000億ドル分の中国製品に対する追加関税を10%から25%に引き上げた。これで、米国は2500億ドル相当の中国からの輸入品に25%の高関税を適用したことになる。また、米国は残り3000億ドル分の中国製品に対しても関税を発動する方向で進んでおり、そうなれば、ほぼすべての中国製品に制裁関税が科せられる。

 今後も交渉は継続される見通しだが、中国は劉鶴副首相、米国はロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とスティーブン・ムニューシン財務長官が協議したものの合意に至らなかったのだから、現時点で短期的に合意に至る可能性は低いと見るのが自然だろう。

 そもそも、この問題の本質は関税の率や品目ではなく、中国の「国家資本主義」の是正および覇権をめぐる争いだ。米国が求めているのは、主に「知的財産権の保護」「為替の自由化(人民元の切り下げ禁止)」「資本移動の自由」「外国企業への経営介入の禁止および差別的扱いの撤廃」などである。

 また、これらが法律により担保され、行政による恣意的運用ができない環境づくりも求めている。さらに、時間的な目標を定めた上で、米国が履行を監督できるような体制も要求している。米国としては、次代の覇権国家の地位を狙う中国の首根っこを押さえつけておこうというわけだ。

 一方の中国としては、これらの要求を完全にのむわけにはいかない。なぜなら、それは中国共産党による開発独裁体制の瓦解を意味するものであり、将来的な経済発展も見込めない事態になるからだ。つまり、現在の共産党の利権をすべて失うことにつながるため、到底受け入れられるものではないのである。

 さらにいえば、今後、米国は人権問題などでも中国をターゲットにすると思われ、同時に南シナ海や一帯一路などの問題へも介入を強めると見られる。そして、どこかで中国側が妥協する姿勢を見せれば、米国はより攻勢を強めていくだろう。そのため、中国としては折れるわけにはいかないのだが、それが大きなジレンマとなっているわけだ。極論をいえば、一連の米中対立において妥協点を見いだすには、共産党が崩壊する以外ないのが実情だ。

 しかしながら、米中関係の悪化は米国経済にも悪い影響を与え得る。そのため、米国としては、時間軸を調整してダメージコントロールを行いながら対処しているのである。

「中国製造2025」を潰したい米国


 仮に米国が中国に妥協した場合、どうなるか。華為技術(ファーウェイ)が典型例だが、中国はIT分野などで米国原産の技術を応用するかたちで世界市場のシェアを奪うことは間違いなく、それは最終的に米国の敗北を意味することになる。中国は「中国製造2025」の名の下に半導体などでも自給自足の体制をつくろうとしているが、それは中長期的に見れば他国の企業にとってマイナスでしかない。

 中国経済の発展は、外国による資本投下と技術移転→技術コピーによる国内製造→外国企業の追い出し、といったモデルが繰り返されてきた。特に、機械や家電、スマートフォンなどの産業が代表例である。資本の移動が自由化されていないため、外国企業にとって中国への投資はデメリットも大きかったわけだ。そして、この構造は大きく発展した今でも変わらないどころか、逆に強化されようとしている。習近平国家主席は社会主義に回帰する政策を推し進めており、それをドナルド・トランプ大統領が敵視しているという構図だ。

中間選挙でアメリカ議会は上院と下院で「ねじれ」状態になった。トランプ政権は民主党と共闘しやすい中国攻撃を加速させていく! 一方の中国は2019年に建国70年記念を迎えるため、メンツとして決して譲歩できない状態だ。2019年は欧州で英国のEU離脱、欧州議会選挙、日本では天皇陛下のご譲位、消費税増税など、国際的に大きなイベントが目白押し。加えて徴用工問題で韓国は墓穴を掘り、朝鮮半島情勢も混沌としていく! 米中は、世界は、アジアはどう変わっていくのか。日本の行方は? 気鋭のエコノミストが分析する!


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