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『西郷どん』ドラマ最高の見せ場があっさり終了…西郷隆盛がただのイヤミな奴に

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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第37回「江戸無血開城」が7日に放送され、平均視聴率は9.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。江戸城総攻撃を前に、天璋院(北川景子)は西郷隆盛(鈴木)を密かに江戸城に呼び寄せ、徳川慶喜(松田翔太)の首と引き換えに徳川家を救ってほしいと頼むが、西郷はこれを冷たく却下する。ところが、勝海舟(遠藤憲一)と会談した西郷は、あっさりと江戸城総攻撃の中止を決断。江戸城は新政府軍に明け渡され、天璋院は徳川家が残した種々の記録を西郷に託して江戸城を去った――という展開だった。

 この大河ドラマが西郷を主役にしている以上、「江戸無血開城」は一番の見せ場であったに違いない。西郷の今後の人生を考えれば、ここがピークと言っても過言ではないはずだ。だが、残念ながら中園ミホ氏の脚本は、またしても絶好の題材を生かしきれなかった。この回を見て、「西郷はやはり偉人だった」「西郷は素晴らしい大人物だ」と感じた人は少ないのではないだろうか。逆に、慶喜への態度を見て「随分イヤミなやつだなあ」と思った人が多そうだ。

 西郷は慶喜の真意を聞き、彼が自分と同じく日本を守ろうとしていたことを知る。「慶喜は日本を異国に売り渡そうとしている。だから慶喜を倒さなければならない」との西郷の思い込みは、完全に間違っていたのだ。だが、これを聞いた西郷は、自分の壮大な勘違いを認めることも謝ることもせず、「徳川家に生まれたことがあなた様のご不幸でありました」と、上から目線の偉そうな台詞を吐く。続いて口にした「よくぞ逃げて日本をお守りいただきもした。おやっとさあでございました(お疲れさまでした)」との台詞も、なんだか随分イヤミっぽい。もっと言い方というものがあるだろう。もし、「時の巡り合わせで敵対してしまったが、我らは同じ方向を向いていたんですね」と和解する流れだったなら、ドラマとしてはきれいに収まっただろうと思えてならない。

 今回のクライマックスだったはずの、勝海舟との会談もあっさりしたものだった。勝は、「江戸100万の民を苦しめてつくる国に、どんな望みがあるのか」と西郷に問う。その言葉を聞いて「民のために」と奮闘していた、かつての自分の姿を思い出した西郷は、すんなりと総攻撃中止を決断したのだ。くだらなすぎて言葉も出ない。「戦争をすれば民が苦しむ」と西郷に忠告したのは、何も勝が最初ではない。とっくの昔に弟の西郷信吾(錦戸亮)が進言したのに、「おいはどげな手段でも使う」とはね付けたではないか。弟の進言を聞かない者が、大して交流もない人から同じことを言われたら、なぜ素直に聞くのか。脚本の意図がまったくわからない。

 満を持して再登場した天璋院も、ストーリー的にはなんの意味もなかった。もちろん、北川景子は美しかったし、「慶喜の首と引き換えに徳川を守ってほしい。その後自分も自害する」と迫る姿は、覚悟を秘めた静かな迫力が感じられて良かった。ただ、結局のところ、第37回の内容を要約すれば「西郷は天璋院の頼みは聞かなかったが、勝海舟の頼みは聞いた」ということになる。西郷と天璋院の再会にストーリー上の意味が特にないのなら、なぜ前半であれほど2人を絡ませたのだろうか。かつて、「自分を連れて逃げてほしい」とまで言った天璋院も立つ瀬がない。

 ケチばかりつけたようなので、ひとつだけ良かった点を挙げておきたい。それは、江戸無血開城が果たされました、めでたしめでたし――で終わらなかったことだ。喜んだのもつかの間、各地で次々に反乱が起こり、新政府内にどんよりした空気が流れる様子まで描いたのは、良い構成だったと思う。江戸城を接取して戦争終結かと思いきや、いつ終わるとも知れない戦いの始まりだった――という、徒労感や絶望感が伝わってきた。突き詰めれば、「江戸無血開城は本当に正しかったのか」という問いかけにもなっている。完膚なきまでに幕府を叩き潰しておけば、その後の戦争は起こらなかったのかもしれないからだ。この「戦争を回避したら戦火が広がった」という矛盾を、今後の西郷がトラウマとして抱えていくとしたら、ドラマとしてちょっとおもしろくなりそうな気がする。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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